岳飛伝 四、悲曲篇 / 編訳 田中芳樹

岳飛伝〈4〉悲曲篇


んー、結局、岳飛という武将は名将ではあっても英雄ではなかったということか。
例えどんなに腐敗していて奸臣に操られている朝廷でも、何の疑いもせずに忠義を尽くす人物。これまでにどれだけその予兆を見せられても、部下がどんなに「謀殺されるだけだから」と止めても、「んなわきゃない」と朝廷に向かい謀殺される。無実の罪で処刑されると知っても、潔く受け入れる。その愚直さを褒めようと思えば褒められるけど、国に忠義をと云いながら、外敵への壁の役目である自分が死んだら国がどうなるかって発想にならない辺り、阿呆じゃなかろうか。
本来、その奸臣以上に岳飛の味方が多いはずなのに、自分の身内(特に自分の息子)が軽いミスしただけで首を刎ねようとする癖に、目に見えて後々の禍根になるような人物が重いミスをしてもちょっと叩いただけで勘弁するもんだから、叩かれたことを逆恨みされて身動き取れなくなって自爆。護衛役の部下にも「抵抗するな!」と命令しちゃうもんだから、無抵抗の内に殺されちゃう護衛。旗揚げした時からの付き合いなのに。
なんだかなあ。
更にこれは逸話、御伽噺の部類ではあるが、岳飛が殺されたことを知った義兄弟や部下達が復讐のため都に乗り込もうとすると、岳飛は霊となって現れ、嵐を起こして6万の兵が3千になるほど大殺戮。途方に暮れた義兄弟、部下は自刃。
生死を共にした仲間に酷い仕打ち。


中国人に、「あなたの国で一番の英雄は?」と訊くとほぼ全員が岳飛と答えるらしい。
なんで?と思ったんだけど、どうも歴史上の一連の流れとして知ってるわけじゃなく、「○○の戦い」だとか「岳飛、○○するの巻」など、多くの人が部分的な英雄譚としてしか知らないそうな。納得。


歳を取ってもギャグ武将担当の牛皐は、遂に仙人に弟子入りして、敵将の目の前にテレポートしたり水の上を歩いたりします。
目からビーム出して岳飛救えば良かったのに。
因みに、弟子入りした理由。岳飛軍を追放されたから。
追放された理由。皇帝名義で奸臣が戦勝祝いに送った酒甕に毒が入っていることに気付き、毒だ死ぬぞ飲むなと甕を割ったから。
ここでも、あれ?


ところで、作品の内容とは関係ないんだけど、これを見てくれ。