僕は天使の羽根を踏まない / 大塚英志

僕は天使の羽根を踏まない (徳間デュアル文庫)


6年前に角川文庫から出版された「MADARA MILLENNIUM 転生編1」の、完結までを書き足した出し直し。
田島昭宇の表紙イラストは下書きで酷いわ、さっぱり続きが出ないわと思ってたら、名を変え出版社を変えイラストレーターを変え、いつの間にやらこっそりと出てたという。文庫落ちでその存在に気付いたよ。単行本は2年前からあったんだなあ。
一生出ないと思ってただけに驚き。


「摩陀羅」という一連の作品群がある。
元々は手塚治虫どろろ、というか百鬼丸のパクリから始まった、百鬼丸のバラバラにされた体の数と同じだけ、摩陀羅を追い求める仲間達が転生する漫画。初めは単純で王道な話だったはずなんだが。
本来は田島昭宇が作画だが、やる気の無い人だからか色んな漫画家が描いてたんだけど、「多重人格探偵サイコ」が始まった辺りから、原作もやる気なくしたのか未完を連発。
この本は、未完の「転生編」から更に枝分かれして未来の変わった物語。


「転生編」は最後の転生で打ち止めの話。
延々と転生を繰り返してる作中人物達も疲れてるってのもあるけど、それ以上に文章から滲み出る「お前らもういい加減この話飽きただろ。他の事しなよ」のオーラ。作者の狙いだとは思うが、シリーズに入れ込んでるファンならショックを受けるかもしれない。
個人的には、この投げやり感が良い味を出してたと思うが。この人の大好きな「終わらない昭和」が一応なりにも終わってたのも珍しい。


これで「摩陀羅」そのものも完結かやれやれ、と思いきや、来年、これまた未完だった「天使編」の4巻目が出るらしい。
こっちはキチンと終わったと思われる「転生編」のその後の話。
打ち止めになって特殊能力を失った抜け殻達の物語で、今回の作品以上に漂う絶望感が好きなのだ。サイコとも完全に繋がってるし。